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日本代協専務理事・野元氏に伺う 【独自力・人間力・スナック力・社員第一・社会との調和・・・】 消費者が必要とする保険代理店の姿とは?

最終更新: 2月27日

今回は、全国に約12,000店の会員がいる日本損害保険代理店業協会の専務理事・野元氏に話を伺いました。

保険代理店に淘汰の波が押しよせる昨今。現状に強い危機感を持った、熱いお話をして頂きました。

今は消費者が保険代理店を選ぶ時代です。この記事は、「こんな代理店と付き合いたい」という参考になりますので、ぜひ読んでください。





野元敏昭氏 略歴

一般社団法人日本損害保険代理業協会専務理事。1978年4月東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社。代理店部、経営企画部、営業開発部部長、高松支店長等を経て、2009年6月現職に就任。現在は損害保険代理店を取り巻く環境整備及び損害保険代理店の社会的認知度向上のための活動に取り組んでいる。

共著「私たち損害保険代理店の事業継続計画(新日本保険新聞社)」




――――保険代理店が今後目指す姿についてお話を伺いたいと思います。


一番のポイントは「地域において必要とされる存在」を目指すということです。

それは「保険商品だけにとらわれずに」ということです。

お客様から信頼されて、支持されて、地域において必要とされる存在として認められれば、環境が変わっても生き残っていけます。

もちろん、「必要とされる存在になりたい」と思っているだけではいけません。いくつかの注意すべき視点があります。





――――必要とされる存在になるために、現在の保険代理店業界の課題は?



制度的な環境変化への対応


近年、一番変わったことは何か。一番は保険募集の根幹となる法律が変わったということです。

2016年に“保険業法”が変わりましたが、昭和23年制定の募取法以来、71年ぶりに初めて保険募集実務に切り込んだ法改正です。

代理店も意識、行動の抜本的な変化が求められているわけですが、この認識が多くの代理店においてまだまだ薄いのかなと感じています。



中でも代理店の在り方が問われるのが、“体制整備”です。

PDCAによる仕組みだった事業運営を求めていると言われますが、中でもCの内部監査が重要です。

自分で問題を見つけ、解決し、改善し、次に活かす。そのために内部監査をきちんと実施するというのが、自立をするポイントです。

2019年度下半期に行われた関東財務局の代理店ヒアリングにおいて、Cのウエイトが大きかったことを見ても分かる通り、代理店の規模に応じながらも、合理的で実効性のあるガバナンス体制を確立していく必要があります。



2点目は、“顧客本位の業務運営”です。

「顧客本位の業務運営」は行政上プリンシプル・ルールの位置づけになっているので、ミニマム・ルールではないのですが、代理店からするとある種の怖さがあります。

というのも、プリンシプルですから、「顧客本位の業務運営」という言葉ですべて判断されるという、ある意味、裁量的な行政が執行されるかもしれませんからね。



しかしながら、そもそも「顧客本位の業務運営」というのは事業会社として当然のことです。

その当然のことが、この業界では必ずしも徹底できていなかったということですね。

というのも、商品をプッシュアウトで売るという感覚が強かったからでしょう。損保の場合、多くはニーズが顕在化していますからね。

さらに、「営業目標を達成しよう」とか「期限を守ろう」といったことは事業会社として当然のことなのですが、それを言い訳に、顧客本位とは言えないこと、更には不正と言われてしまうようなことでも許しがちな文化になってしまったように思います。

今後は“不正を許さない企業文化の醸成”が非常に大きな課題になってきます。それは、今回の某生保会社の事件を巡る消費者の反応をみても明らかですね。



さらに、“サイバーセキュリティー対策”も重要な課題です。

サイバーセキュリティー対策ができていない代理店は、お客さまは勿論ですが、保険会社にとっても大きなリスクですから、今後保険を販売できなくなるのではないでしょうか。

いずれ代理店委託・継続取引の基準にもなるのではないかと思います。




内部的な課題への対応


損害保険業界の共通課題ですが、属人的なノウハウで勝負してきた業界でしたので、“業務プロセスやお客さま対応の標準化”が十分できていません。

この状態のまま体制整備をしても意味はないですよね。まず自社の業務のマニュアル化・営業のスタンダード化を進めることが大切です。



その時必要になるのが、“ITの活用”です。

ITの活用が遅れているので、他業界から保険業界に来た人は唖然とするわけですが、これだけ紙の業務が残り、口頭ベースのやりとりが残っているのは、やはり時代遅れだと感じます。ITの活用は重要な課題です。


もちろん、それは損保も生保も、スマホで売れ、というようなことでは全くありません。

お客さまに応じたリスクコンサルティングのためには人の介在は絶対必要です。

「デジタルの方が優れていること」はデジタルをフル活用した上で、人の価値を発揮するための時間を創出し、より効果的なアドバイスができるようにするということです。

例えば、保険会社のオンラインシステムやソシオダイバシティの顧客管理ツール「VOS」もそうですし、IBの「保険簿」もそうです。

今こそ、ITを活用した業務のスタンダード化、お客様対応のスタンダード化が必要です。



併せて重要なのが、“計画的な社員育成”です。

特に、損保業界においては、計画的な社員育成は、生命保険業界に比べ遅れている感があります。

代理店もそうですが、保険会社社員ももっと勉強すべきです。

そもそも、損保は、自動車保険などのようなニーズ顕在型の商品がメインだから、商品のことさえある程度わかれば、営業できてしまう面があります。契約の85%程度は更新手続きによって継続的に収入が入るわけですから、他の業態と比べれば安定した営業形態の事業とも言えます。

だから、社員も代理店も必死になって勉強する必要を感じないような面があるのではないでしょうか。

一方、生保はニーズ潜在型で掘り起しが必要ですし、相続や税務対策、事業承継などの観点から、広くて深い知識がないとお客さま対応ができないので、勉強しないと売れないですよね。

損保業界にもっと「学ぶ文化」が根付くといいな、と思っています。



他にも、“経営者のマネジメント力強化“が求められています。

特に損保代理店の経営者は、スーパー営業マンが法人の代表になったという感じもあり、マネジメント力が総じて低いことが課題です。

環境は変わり、過去の成功体験だけでは通用しないので、「経営力」を身に着けることが重要です。

本来、経営は、明確で強い経営理念に基づき、将来のビジョン実現のための具体的な経営計画を策定し、必要な投資を行いながら、具体的に取り組んでいくものです。

ところが経営理念があいまいだったり、ビジョンがなかったり、経営計画が形だけで具体的な行動に落とし込まれていなかったり、といったことも多いんですね。これはマネジメントじゃないですね。



次に、“事業の持続性確保”という課題。

家族経営の代理店もまだ多い業界ですが、事業の持続性確保は課題です。親族継承や内部継承をするにしても他から採用するにしても、次代の人が継ぎたい、と思うような代理店をどう創り上げていくかが課題ですね。勿論、そこで一緒に働いてくれるメンバーも必要ですから、オフィスの環境や福利厚生などにもしっかり取り組む必要があります。

それに加えて、BCP(事業継続計画)も必須になりますね。

一定の顧客基盤と取引保険会社の信頼も重要です。





――――必要とされる存在になるにはどうすべきでしょうか?


今までお話ししたことは多くの皆さんが指摘されることだと思いますけども、それを実現していくにあたって、私自身がポイントになると思っていることを補足しておきます。


独自力

他にはない独自の強さが必要です。

例えば「24時間365日事故対応します」という場合には、スローガンではなく実態を伴うことが必要です。

人は必ず寝ますから、「寝る」ことを前提として「要員を整えているのか?」「場合によっては仮の宿泊場所があるのか?」「出動するときの車をどう準備しているのか?」「年に何件そういう依頼があって、そのうち何件対応しているのか?」「その対応したお客様はその後どうなっているのか?」そういうことを証明して、初めて独自力があると言えるのだと思います。

他では容易に真似ができないこと、それが独自力です。



人間力

実際にお客様の声を聞くと、代理店の規模の大きい、小さいは関係ないんですね。

お客様は、「目の前の人が感じがよいか?」「ちゃんと自分の質問やニーズに答えてくれるか?」「約束したことを守ってくれるか?」といった人間性や現場の対応力を問うているので、この点は、全ての募集人に共通の強化ポイントだと思います。



聴く力

人間力のベースとなるのが「聴く力」です。

「スナックする」という言葉があるみたいですね? 地方のスナックがなぜ残っているのか、それは、「人の話を聴いてくれることだ」ということで、「聴く力」を指しているそうです。面白い表現ですね。

代理店は「聴く力」が活かされる仕事です。それを活かしてネットワークのハブになれば、その中でコミュニティが生まれ、仕事も生まれてくるように感じています。



働く環境

顧客本位の本質は社員満足だと考えています。そういう意味で「お客様第一」は正確ではなく、「社員第一」が重要ですね。

社員が楽しく働ける環境を作れば作るほど、その社員はお客様に親切に対応できるようになるのではないでしょうか。



⑤生産性向上

「社員第一」を考えると、業務効率化を進めながら、お客様を増やし、生産性を上げなければなりません。

損保代理店業界は、必ずしも生産性が高いとは言えないので、このままだと若い人が目指したい仕事にはなりにくいですね。

損保主体の代理店としては、1人当たりの収益性として1千万円ぐらいは必要ですね。そうすれば、社員にそれなりの待遇を確保できるのではないでしょうか。そのために、生保の取り組み強化は必須です。

お客様からみれば、生保も損保も「保険」なので、保険のプロとして生損保分け隔てなくフルコンサルで対応していきたいものです。



⑥社会との調和

保険業界を見ているのは、お客さまや金融庁だけではありません。労基署もあれば年金事務所もあります。「地域の人」の目もあることを忘れてはいけません。

コンプライアンスは事業活動の基盤ですし、CSR活動も社会の中で生きていくためには当然の取り組みになります。





―――――今後、代理店に求められる規模は?


保険代理店は、規模が小さいから悪い、というわけではありません。あくまで問われるべきは品質です。

お客さまに必要とされる価値があり、業務品質が高く、体制も整備されていて、経営に持続性があることが重要です。

かといって、あまりに小規模で収益に余力がないと、IT活用やサイバー・セキュリティ対策も十分できないし、外部監査を委託する余裕もありません。社員の待遇改善も難しいですね。

何よりも、お客さま対応に時間的・物理的限界も生じますので、やはり一定の顧客基盤は必要です。


規模に関しては、業界内でも意見は様々ですが、一例で言えば、10人位のメンバーが揃うと、営業、バックオフィス、事故担当、経営の体制が取れて、専門性を磨くこともでき、要員代替もできますね。

人数だけの問題ではありませんし、保険会社はもっと大きな規模感で販売チャネル戦略を進めていますが、代理店としての価値を発揮するために必要な在り方を考える一つの目安にはなるでしょう。

今のままの規模では将来が不安という場合には、合併や統合なども選択肢になると思いますが、形だけ整えても意味がありません。

中身が変わらないどころか、品質が落ちてしまいます。

マネジメントや業務プロセスの統一は必須ですし、それ以前に経営理念をしっかりと共有し、社員教育を徹底することが大事ですね。

規模が大きくなればなるほど、理念の統一や浸透、品質維持のための研修などに注力する必要があります。





――――不動産などの兼業代理店は今後どうなりますか?


保険募集に関しては、地域のプロ代理店と提携するか、あるいは全て委ねるか、という選択肢になるでしょうね。

多くの保険会社と取引している場合は、数を絞りこみ、自社の体制に応じた形で求められている募集品質をカバーすることを目指すことも必要になります。


モーター系代理店も似ていますが、モーター系は自賠責があるので代理店をやめることは難しい面があります。

したがって、自動車保険のプロになるか、自賠責だけモーター系代理店で契約し、任意保険はプロ代理店と提携するといたケースが増えるのではないでしょうか。

一方で、自動車ディーラーの中には「自分たちもプロ化していこう」という動きもあります。

損保代理店18万店のうち15万店は兼業系ですから、3年ぐらいで構造は大きく変わりますね。





――――若い世代にとって、保険代理店業の魅力は?


「ITによって仲介業者がいなくなるのではないか」と言われますが、保険はそうはいきません。

保険は売るのも決して簡単ではありませんし、そのあともあるからです。


最近あった例をお話します。

ある人が自動車で死亡事故を起こし、過失が100対0の加害者になってしまいました。

葬儀に行けば罵倒されることは目に見えているし、何をされるかわからない。かといって、葬儀にも顔を出さなければ「葬儀にも来なかった」と言われて、示談がこじれる可能性があります。

そんな中、代理店の担当者が背中をたたいて、「何をされても我慢して頭下げて帰ってこい」と送り出してくれた。その後、厳しい視線と罵声を浴びてとぼとぼと帰ってきたわけですが、代理店が「よく頑張ったね」と言って、車に乗せて事務所に連れていき、お茶を出して「これから頑張ろう」と言って励ましてくれた、というのです。


そんなことがITにできるのかということなんですね。

お客さまの身近にいて、寄り添えることには大きな価値があるのです。

保険代理業はそういった価値を提供できる、魅力ある仕事だと思います。





――――保険代理店に期待する請求勧奨の取り組みについてお聞かせください


当局が求めているのは、兼業・専業とか、生保・損保とか関係なく、保険募集人は全て「顧客本位で業務ができるプロでないと通用しない世界にする」ということです。

つまり保険募集のレベルを上げなければいけない。

結果としてプロ同士の競争になりますから、ちゃんとやっていても振り落とされるかもしれません。そういう危機感を持つべきです。品質向上に終わりはないのです。


そんな中で、代理店は「保険販売」以外の価値提供策が必要になってきます。

請求勧奨はその一つになるでしょうし、顧客本位の実現につながると思います。




証券管理はお客様に評価される


証券管理をベースとした請求勧奨はお客様にとって有意義です。

さらに横断的な請求勧奨をするには、自社契約以外の保険契約も管理しなければいけません。

それはお客様のリスクマップの作成に繋がり、補償のダブりや漏れの把握もできるので、対応策の整理にも有効ですよね。そこまでして初めて最適な提案ができるようになります。


実際に、全国には、証券管理と請求勧奨をしっかり行って、お客さまから「絶対に必要な存在」と認められている代理店もいますので、良い例だと思います。


保険会社は、当然ながら保険契約は全部自社で、と考えますが、お客様には、様々な人間関係もありますので、「1社でまとめたい」というのは保険会社目線なんですね。

だから、証券管理をベースにした請求勧奨にはすごく価値があると思います。




証券を管理することでお客さまの無駄を減らす


我々のアンケートでは、お客様は「保険の話は30分ぐらいにしてほしい」というのが78%なんですね。

残りは「もっと長くていい」と言っているのではなく、「もっと短くしてほしい」という人が多い。

中間値が約30分という中で、それ自体ではお客さまに価値を生まない手続きに時間をかけていると、コンサルなんかできません。なので「いかに手続きの時間を減らすか」が課題です。

そのために証券管理を行っておけば、お客さまの契約状況を常に把握し、必要な補償を必要なタイミングでご提案することができますし、請求勧奨もしやすくなるわけですね。

その点、保険簿のような取り組みは価値がありますし、お客様からすると喜ばれると思います。

でも、やるなら中途半端に取り組むのではなく、組織として徹底的にやることが大切です。





(あとがき)

保険代理店業の課題や、今後の方向性を、できるだけかみ砕いてわかりやすく話して頂きました。

消費者の皆さまにとって、信頼できる保険の担当者を見つける為のヒントになると幸いです。

野元様、貴重なインタビューをさせていただき、ありがとうございました!

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